受賞者インタビュー
Q. どのように絵の勉強をされたんですか?
A. 小さいころから絵を描くのが好きで、大学卒業後に1年間、専門学校でコンピュータを使ってイラストを描く勉強をしていました。具体的に絵を描く勉強をしたのはそれくらいですね。
Q. いままで多くの絵本コンクールに応募されたのですか?
A. 子育てや普段働いている幼稚園での仕事が忙しくて、描けない時もありましたが、いままでに多くのコンクールに出品させていただきました。いろいろな絵本コンクールに出しましたが、これまでに出した中では逗子の絵本コンクールでの準優勝が最高でした。ですから、今回初めて大賞を頂けて、すごく嬉しかったです。
Q. 「こころの絵本大賞」への応募の動機を教えていただけますか?
A. インターネットのページを見ていて、「こころの絵本大賞」のことを知りました。8月下旬が締切というところがちょうどタイミングがよくて、応募しようと決めました。
Q. 今回の作品はどのようにシナリオを考えられたのですか?
A. 実は息子の同級生にお寺のお子さんがいまして、そこのご住職が「和顔(わげん)」という言葉が書かれたTシャツを着ていました。そして、「和顔施(わげんせ)」という言葉をご住職から聞きました。(「和顔施(わげんせ)」とは柔和な笑顔で人々と接することによるお布施のこと)この「和顔施」という言葉が今回のお話を作るうえでヒントになりました。
Q. 作品を描く上での苦労談はありますか?
A. 幼稚園のお手伝いもしていて、普段はあまり絵を描く時間がありません。また、子どもを育てながらでしたので、絵本を描くためのまとまった時間がいままでとれませんでしたが、 夏ごろちょうど主人に少し時間がありましたので、主人に子育て等の家事をお任せして、今回の作品を完成させました。家族の協力がありがたかったですね。また、長男が今回の作品を読んで、アドバイスをくれたこともありました。子ども目線からのシナリオのアドバイスはかなり貴重なものでした。
Q. 今後の展望はありますか?
A. 家事などで時間の制約はありますが、今後も楽しい作品を作り続けていきたいと思っています。
「第4回 こころの絵本大賞」審査経過及び講評
波賀 稔(鈴木出版編集長)
第4回目の「こころの絵本大賞」には89編の応募がありました。今回より、応募規定の画面数に幅をもたせたためか、2回目、3回目よりも応募数が若干増加しました。作品自体も、年々、絵のレベルは上がっているように感じます。ただ、ストーリー構成については五十歩百歩といったところでしょうか。特に、文章の質が低迷しています。絵本の文章は、声に出して読まれることが多いので、何度も何度も声に出して読んで推敲することを心掛けてほしいと思います。
さて、今年は9月3日と4日の2日間で、一次審査を行いました。応募作品89編すべてを声に出して読みながら、選考しました。相変わらず、どこかで見たようなストーリーであったり、作者のご都合主義の展開であったり、完成度が低い作品などもありましたが、その中から作も絵もある程度のレベルに達しているものを20点ほど選考し、一次審査通過作品としました。
20点の作品については、児童文学者の西本鶏介氏、絵本作家の藤本ともひこ氏、編集者の波賀が、9月27日に仏教伝道協会の会議室で審査を行いました。大賞候補として最後までしのぎを削ったのは『アリがダンスをおどったら』と『おじいさんとことり』でした。パンチ力と温もり力で意見が分かれましたが、最終的には、子どもが共感でき、本にしても力がありそうな作品ということで、『アリがダンスをおどったら』が大賞となりました。そのほか、大賞候補として検討された作品はいずれもテーマがわかりやすいものであり、甲乙つけがたく、優秀賞としました。惜しくも、賞には届かなかったものの、新鮮さがあったり、これから期待できそうな作品については佳作としました。なお、受賞した各作品の講評については、西本鶏介氏、藤本ともひこ氏の講評をご覧ください。
全体的には、絵はいいのに、作がいまひとつという作品が多かったように思います。次回はもっと構成力や文章力のある作品がたくさん応募されることを期待しています。文章のレベルが上がると、展開もリズムもだいぶ違って、いい作品になると思います。
<第4回 こころの絵本大賞 講評>2019
西本 鶏介
選考後の調査によれば入賞者の多くは各種の絵本コンクールで受賞していて、それだけに色づかいやデッサン力のすぐれた作品が目につきました。ただし、文となると類型的でお話の面白さに欠ける作品が目につきます。動物を擬人化すればお話になると考えるのではなく、私たちの身近な素材を通してもすぐれたお話はいくらでも書けるはずです。
絵本なのに長い文章と絵を別にして応募をするのはどうかと思います。
<第4回 こころの絵本大賞 講評>2019
藤本 ともひこ
絵本は基本的に「絵」と「文」でできあがっています。今回絵の素晴らしいものは、いくつか見受けられました。
でも「文が面白い」ものがなかなかありませんでした。
まずはお話から考え始めるという方向性で、絵本を捉え直してみませんか。絵を描きたいという欲求は理解できます。ですがそれで成立する絵本は、なかなか無いように思います。
出来上がった物語なり展開を、後から絵にしてみる。絵で表現してみる。この順番だと、描きたい絵だけを描くわけにはいかないことに気づくはずです。
ここを越えると、何か見えてくると思いませんか。みえるものがあったら、あらためて自分流の作り方で、思う存分楽しんで、苦しんで描く。それだけです。
今回賞に至らなかったあなたに、ぜひおすすめのポイントです。
「物語の起伏」という視点をもとに、いまある絵本をよんだり、小説、映画、ドラマなども見てみてください。きっと参考になります。大賞作品はダイレクトに物語ではなかったので、このかたが、ひとりの主人公を決めて物語るとどうなるかもみてみたいですし、そこがこれからの課題にもなるかもしれません。みなさんの、こどもを喜ばせたいという気持ちに、期待しています。面白い絵本を、これからも作っていきましょう。
文はどの頁も短いことばだけですが、ダイナミックで奔放的な絵でとんだり、はねたり、抱きあげたり、走ったり、草の上にねたり、ブランコやすべり台で遊んだりするパパと女の子の姿を活写した絵本。うれしくてじゃれあう父子の愛情までもいきいきと伝わってきます。(西本)
パパと娘のスキンシップ絵本。何という奔放で伸び伸びした絵でしょう。ちょっとタッチに既視感もありますが、ダイナミックは抜きんでていま
す。もう一歩読後感になにかあると、揺るぎない作風にもなります。物語の起伏をもっとつけるということです。あと2人の関係性がちょっとウェットすぎるかな。でも、お風呂のお尻のシーンは、こどもは喜ぶでしょうね。でもお尻の穴を見せずに、どこまで笑えるかも考えてみてください。(藤本)
虫好きの女の子と虫ぎらいのおとうちゃんを描く愉快な絵本。いささかマンガ的ですが、太い線を生かした大胆な構図と色づかいは好感が持てます。タイトルには少し工夫したい。(西本)
可愛い娘がゴキブリになったらどうするんですかって絵本。この設定発想は面白い。ですが、お父さんがゴキブリになった、ハナちゃんをどうして好きなったのかの理由が弱すぎませんか。好きになる過程に物語がありそうです。そこに物語の起伏をつける。このままでは説得力は弱いです。絵はこってり系。記憶に残ります。いいんじゃないでしょうか。ごちゃごちゃした文字の書き込みはいりません。(藤本)
ひとりぐらしのおじいさんと小鳥のなんとものどかで、ほのぼのとしたくらしを描いた絵本。とりわけて新しいところはないが、なんだか心があたたかくなります。少し地味には見えますが、おじいさんのとぼけた表情や淡色で描かれる光景もこのお話にぴったりな気がします。(西本)
孤独なおじいさんと、小鳥の交流物語。可愛いおじいさんと、カラフルな画面は面白い。交流のエピソードが普通過ぎてスルーしてしまいます。小鳥がいなくなったのが唐突で、あまりおじいさんも悲しんでいません。帰ってきてもまあそうなんだくらい。この物語の起伏はほぼ平坦です。読者はもっと起伏のある物語が読みたいと、ぼくは思うんです。ほっこりする良さを残しつつ、あといっぽ、踏み込んで見てみてください。(藤本)