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受賞者インタビュー
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インタビューはさいとうじゅんさんの個展会場で行われました。会場には「はしるおじぞうさん」とはまったく違うタッチの絵がならんでいました。
Q. 小さいころから絵が好きだったのですか?
A. 小さいころから好きでしたね。母の話によると、箸をもつより前から絵を描いていたそうです。若い時には何校か絵の専門学校に通いました。当時、安野光雅さんの旅の絵本や葉祥明さんの絵本がブームで、その頃から絵本作家に憧れていましたね。絵と同時にストーリーを考えるのが昔から好きでした。
Q. 以前、絵本の賞やイラストの賞に応募されたことはあったのですか?
A. 絵本に関してはときどき応募することがありましたけど、大賞はとれませんでした。ただ、イラストの賞は講談社さんで大賞(2000年講談社フェーマススクールズKFSアートコンテスト大賞)を頂いたことがありました。あと、JRAさんでも賞(2001年JRA馬の絵展・優駿賞)を取ったことがありましたし、他にもいくつか賞をいただきました。
Q. いままでにどのようなイラストを描くことが多かったですか?
A. ホームページにも絵を載せていますけど、好きなスポーツを題材に描くことが多かったです。
Q. 「こころの絵本大賞」への応募の動機を教えていただけますか?
A. 以前、お寺がテーマの詩にイラストを描くという仕事があって、お地蔵さんの絵を描いたことがありました。「こころの絵本大賞」の応募情報に触れたときに「お地蔵さんを題材にすると作品が描けるのでは・・・」と思いつきました。実は母方の祖父がお寺の出身で以前から仏教には少し縁がありました。
Q. 作品を描く上での苦労談はありますか?
A. 普段まったく動かないお地蔵さんが走ったら面白いなあという発想はすぐに思いつきました。そんなに複雑なストーリーではありませんでしたので、かなり早く描くことができたと思います。描いていて楽しかったですね。
Q. 今後の展望はありますか?
A. 現在、イラストや漫画の仕事はもちろん、アクリル加工の仕事などもしています。本当はイラストや絵の仕事だけでやっていくのが理想といえば理想なのですが・・・。今後「はしるおじぞうさん」がシリーズ化なんてすると非常にうれしいですね。
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「第2回 こころの絵本大賞」審査経過及び講評 <審査経過及び講評>
波賀 稔(鈴木出版編集長)
第2回目となった「こころの絵本大賞」は、応募総数80作品でした。昨年よりも応募総数が減少しましたが、
全体的には、応募規定に合った、質の高い応募作品が多く見受けられました。
9月5日と6日の2日間で第一次審査を行い、絵とお話の双方がある程度のレベルに達していることを考慮し
て、20作品を選考しました。
そして、一次審査通過の作品については原画を提出してもらい、9月19日に、児童文学者の西本鶏介氏、絵本
作家の藤本ともひこ氏に加わっていただき、最終審査を行いました。
絵の質や、絵本としての展開のユニークさ、独自性などを基準に、大賞1作品、優秀賞3作品、佳作5作品を決
定しました。
大賞作品と優秀賞3作品はそれぞれに良さがあり、その差はほとんどありませんでしたが、発想のユニークさ
ということで、「はしれ~ おじぞうさん」が僅差で大賞に決定しました。
全体の応募作品の傾向としては、主催者が仏教伝道協会ということで、敢えて仏教的要素を取り込んだ作品
もありましたが、審査においては、「子どもにこころのたいせつさを伝える」絵本という趣旨に従って、絵本との
完成度ということで審査しました。
受賞各作品については、西本鶏介氏と藤本ともひこ氏の講評をご覧ください。
惜しくも選には漏れましたが、審査経過の中で審査員の票が入った作品は、「ちいさなて」(砂原保育園卒園児)
「がんばれ!まほちゃん」(三原さい)、「ないたおにかあさん」(くらもとこ)、
「サクサクランランさくらんぼ」(加藤利佳)、「ロッキーが教えてくれたこと」(さかもとずんこ)、
「3だいめマドレーヌさん」(かけひさとこ)でした。
<第2回こころの絵本大賞 講評>2017
西本 鶏介
-大胆で個性豊かな作品を-
どれほど意義深い内容であっても、絵本としての魅力がなければ二度と読まれることはありません。だれもがお
もいつくような類型的ストーリー、デッサン力や色彩感の乏しい絵本では応募する意味がなくなってしましま
す。こころの絵本といえば、まじめで信仰的なお話を思いがちですが、自由な発想で生きるよろこびや人とのす
てきなふれあいがいきいきと伝わる作品をかくようにしてほしいものです。お話も絵も器用にまとめるのではな
く、もっと大胆で個性豊かなものにして下さい。大笑いしながらも人のやさしさに深く胸を打たれる作品だって
かけるはずです。
最終審査に残った作品はユニークな筆づかいの面白い絵本もありましたが、総じてお話が弱く、文章だけで
も興味深く読めるストーリーを考えて下さい。
<第2回こころの絵本大賞 講評>2017
藤本 ともひこ
テーマに沿ったリアリテイを、ほらふきストーリーでみせてほしい。
絵本にもいろいろある。けれど基本、絵本はフィクション。
楽しませてほしい。のです。
奔放な世界を見せてほしい。のです。
いい意味での破綻を楽しみたい。のです。
しかも、今回の応募においては、絵本の構成ができていないものが、
目立ちました。
「構成」「文章」「画力」のバランスに、自分らしさをプラスしていかないと、
たぶんプロの世界では通用しません。
自信を持つところはもって、改善できる点は真摯に取り組む。
いまだかつてみたことのない楽しい絵本を作って、この世界をより楽しくしてみてください。
こどもたちの笑顔のために。
お互い、頑張りましょう。
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「そらのむこう」は金子みすゞの詩から生まれたイメージを絵本にしたも
のですが、美しく情感豊かな絵はなんともすばらしい。ただし、自分の創
造した世界を描くべきで、たとえイメージでも借りるのは感心できませ
ん。(西本)
金魚が空を飛ぶシーンが、最高に素晴らしい。
でも、絵本にはなりきれていません。
絵で語るのに、詩は、実は邪魔です。
言葉だけで想像させる詩の世界を絵にするのは本当は傲慢なんです。
そこは真摯に考えてみてください。
あの金魚の物語をこそ絵本にして見せることに集中すれば面白いと思い
ます。
詩から離れてみてください。(藤本)
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「ちよちゃん おー」はバイタリティあふれる絵本で、いささかマンガ的で
すが、鮮明な色彩と奔放な筆づかいの絵が面白い。(西本)
コントのように面白い。
ちよちゃんは一度見たら忘れない。
面白いんですけど、お話の骨子が、あまりにもパターンなのが残念。
お父さんとの関係に絞ったら、新しくなったかな。
キャラは抜群です。(藤本)
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「ボクのしあわせ」はティッシュ(正確には箱)を主人公にした楽しい善意
のお話。文章にムダがなく、お話づくりがたくみで、明るい絵もお話に
ぴったりで見やすいです。(西本)
ティッシュの擬人化がいい感じです。
もっと使い道があるかな。100個考えて精査しましたか?
そこをたっぷり見たかった。
タイトルは「ティッシュくん」じゃないかしら。 (藤本)