英訳大蔵経事業の概要

この大蔵経(だいぞうきょう)の英訳事業は、当協会の創立者・沼田惠範が『大正新脩大蔵経(たいしょうしんしゅうだいぞうきょう)』全100巻を英訳することを発願し、昭和57(1982)年1月、英訳大蔵経編集委員会を招集したことが端緒となっています。
一般に「お経」と呼ばれている仏教の聖典は、実は「三蔵(さんぞう)」というものの一部です。「三蔵」とは、経蔵(きょうぞう)・律蔵(りつぞう)・論蔵(ろんぞう)のことです。「蔵」とは、仏教の教えを収めている「入れ物」のことです。「経」とはブッダ(釈尊・しゃくそん)の説いた教えをまとめたもの、「律」とは出家修行者の生活の規則をまとめたもの、そして「論」とはこれら「経」「律」に対する注釈または解釈です。スリランカ・タイなどの南方仏教で用いられている「三蔵」は、「パーリ三蔵」ともいわれます。
中国では、この初期の仏典と後に成立した大乗の仏典が区別されることなく伝えられ、後漢時代から北宋時代にわたって翻訳(漢訳)されてきました。そうした聖典に、中国の高僧の著述を含め、まとめたものが「一切経(いっさいきょう)」または「大蔵経(だいぞうきょう)」と呼ばれています。
チベットでは、翻訳した聖典を、ブッダの言葉(仏説部・カンギュル)とその注釈(論疏部・テンギュル)とに分類していますが、まとめて「チベット大蔵経」とも呼ばれています。
その中でも漢訳の大蔵経は最も大部なものといえます。現在、その規範となっているのは、日本仏教の学匠達の著作まで含めて出版された『大正新脩大蔵経』全100巻です。この中には、11,970巻、3,360部の経・律・論・疏(注釈)等の聖典が収められています。

欧米をはじめとする英語文化圏にも仏教の真髄を伝えるためには、「集大成された仏典」すなわち『大正新脩大蔵経』を英訳する必要があります。膨大な大蔵経のすべての翻訳を短い年月で完成させることが極めて困難であることを十分理解していた英訳大蔵経編集委員会は、第一期分として全体量の約10分の1に相当する139の典籍を選択し、翻訳を開始しました。また、この遠大な事業を推進するため、平成4(1992)年、米国カリフォルニア州バークレー市にある沼田仏教翻訳研究センターに英訳大蔵経出版委員会が設置されました。
現在までに、50冊、84典籍が「英訳大蔵経」として出版され、残りの典籍についても、世界十数ヵ国の仏教学者の方々により翻訳が進められております。できるだけ早く第一期分が出版できますように、これからも努めてまいります。



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