英訳大蔵経刊行の辞

大蔵経と名づくるは、八万四千の法門を含むものなり。応病与薬を基本の立場とする仏教におきては、一つ一つの聖教、機に応じ時に臨みてその光を放つ。しかればすなわち、聖典の、一として捨つべきものなし。
大聖釈迦牟尼、入滅してよりこのかた二千五百有余年、仏教東漸して、智慧と慈悲との教え、全世界に及ばんとす。しかるにこの間、仏教典籍のすべてを英訳せんと志すもの、本邦に於きてはいまだかつて一人として現れず。今ここに、大蔵経を英訳・刊行し、いまだ大聖の智慧に触るる機会の無き人びとを裨益(ひえき)せんとの大願を起こす。

八万四千の法門を、短日月の期間に翻訳・刊行すること、もとより至難の業なり。しかればここに、その膨大なる聖教の中より百三十九部を選び、英訳大蔵経「第一期」として刊行せんとす。
あるいは、本企画に対する種々なる批判あらんことを恐る。しかれども、是くの如きの難事業、敢て何人かが試みざる限り、永遠に成らざるものと思量す。将来の、よりすぐれし改訂版の完成を期待するものなり。
東西の仏教学者百余名の協力に成る「英訳大蔵経」の大事業、今や緒につけり。願わくば、大聖の智慧光、あまねく全人類に及ばんことを!

合 掌

平成3(1991)年8月7日
英訳大蔵経刊行発願者
沼田惠範


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